コラム

あおり運転(妨害運転罪)の罰則は最大5年の拘禁刑。対象になる11の行為と、受けたときの対処

2026年10月21日 公開

収穫後の田んぼを横切る道を、長い車間を空けて同じ方向へ走る二台の車。記事タイトルを添えたアイキャッチ
目次
  1. あおり運転は「妨害運転」として罰せられる
  2. 対象になる11の行為
  3. 罰則は2段階。著しい危険を生じさせると5年
  4. あおり運転を受けたら、車の外に出ずに110番
  5. しない側に回らないために、教則が書いていること
  6. よくある質問

いわゆる「あおり運転」は、道路交通法では妨害運転と呼ばれ、罰則があります。警察庁によると、令和2年(2020年)6月30日から罰せられるようになりました。罰則は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、高速道路で相手の車を止めさせるなど著しい危険を生じさせると5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。ここでは条文と警察庁の資料から、何が妨害運転になるのか、受けたときにどうするのかを整理します。

あおり運転は「妨害運転」として罰せられる

警察庁の「危険!『あおり運転』はやめましょう」は、罰則ができた経緯をこう書いています。

令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)により、妨害運転(「あおり運転」)に対する罰則が創設されました。

— 警察庁「危険!「あおり運転」はやめましょう」妨害運転罪の概要(2026年10月確認)

それまでの事情について、令和2年版の警察白書は「これまでの道路交通法には、「あおり運転」そのものを取り締まるための規定がなく、法定刑や行政処分が十分なものにはなっていないのではないかとの指摘もみられた」と書いています。

罰則の中心になる条文は、道路交通法第百十七条の二の二第一項第八号です。罰せられるのは、次の者です。

他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者

— e-Gov法令検索「道路交通法」第百十七条の二の二第一項第八号(2026年10月確認)

同じ条の第一項の柱書きが、罰則を「三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」と定めています。

条文を分けると、罪になるのは次の3つがそろったときです。

  1. 目的:他の車両等の通行を妨害する目的がある
  2. 行為:条文が挙げる11の行為(次の節)のどれかをした
  3. 方法:相手の車両等に、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法でした

対象になる11の行為

第八号は、対象になる行為をイからルまでの11の記号で挙げています。どれも、道路交通法のほかの条文を指す形で書かれています。指された条文の中身と、警察庁のリーフレットでの呼び名を並べると、次のとおりです。

記号 指している条文 条文の中身 リーフレットの呼び名
イ 第十七条第四項(通行区分) 道路の中央から左の部分を通行する 通行区分違反
ロ 第十八条第三項(左側寄り通行等) 同じ方向に進む特定小型原動機付自転車等の右側を通過するとき、十分な間隔がなければ、間隔に応じた安全な速度で進む 自動車等が自転車等の右側を通過する場合の通行方法に関する違反
ハ 第二十四条(急ブレーキの禁止) 危険を防止するためやむを得ない場合を除き、急ブレーキをかけない 急ブレーキ禁止違反
ニ 第二十六条(車間距離の保持) 前の車が急に止まっても追突を避けられる距離を保つ 車間距離不保持
ホ 第二十六条の二第二項(進路の変更の禁止) 後ろから来る車の速度や方向を急に変えさせるおそれがあるときは、進路を変えない 進路変更禁止違反
ヘ 第二十八条第一項・第四項(追越しの方法) 前の車の右側を通って追い越し、できる限り安全な速度と方法で進む 追越し違反
ト 第五十二条第二項(車両等の灯火) 夜間、他の車両等と行き違うときや直後を進むとき、交通を妨げるおそれがあれば、灯火を消す・光度を減ずるなどの操作をする 減光等義務違反
チ 第五十四条第二項(警音器の使用等) 法令で鳴らすこととされている場合と、危険を防止するためやむを得ないとき以外は、警音器を鳴らさない 警音器使用制限違反
リ 第七十条(安全運転の義務) 他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する 安全運転義務違反
ヌ 第七十五条の四(最低速度) 高速自動車国道の本線車道で、最低速度に達しない速度で進まない 最低速度違反(高速自動車国道)
ル 第七十五条の八第一項(停車及び駐車の禁止) 高速自動車国道等で、決められた場合のほかは停車・駐車しない 高速自動車国道等駐停車違反

条文の書き方は2通りあります。ハ・ト・チ・リは「規定に違反する行為」、それ以外の7つは「規定の違反となるような行為」です。

ロは、あとから加わったものです。警察庁のページは、令和8年(2026年)4月1日に第十八条第三項が施行され、その通行方法の違反が「妨害運転の違反類型に追加された」と書いています。リーフレットも見出しは「11類型」で、ロの行為には「令和8年4月1日より追加」と添えています。

罰則は2段階。著しい危険を生じさせると5年

妨害運転には、もう一段重い罰則があります。道路交通法第百十七条の二第一項第四号が罰するのは、次の者です。

次条第一項第八号の罪を犯し、よつて高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者

— e-Gov法令検索「道路交通法」第百十七条の二第一項第四号(2026年10月確認)

「次条第一項第八号の罪」が、前の節の妨害運転です。この場合の罰則は、同じ条の柱書きで「五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」です。

警察庁のリーフレット「STOP!あおり運転!!」は、罰則と行政処分を次のように並べています。

罰則 違反点数 行政処分
妨害運転(交通の危険のおそれ) 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 25点 免許取消し(欠格期間2年)
妨害運転(著しい交通の危険) 5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 35点 免許取消し(欠格期間3年)

欠格期間は、前歴や累積点数がある場合、それぞれ最大5年・最大10年になると注記されています。

警察庁のページは、取消しについて、妨害運転をした者は「当該行為のみで運転免許の取消処分の対象となる」と書いています。違反点数を積み重ねなくても、妨害運転1回で取消しの対象になります。

このほかに警察庁が挙げていることが2つあります。

  • 人を死傷させた場合:「危険運転致死傷罪(妨害目的運転)等にも当たる場合があり、さらに厳罰に処せられることがあります」
  • 妨害運転罪などの適用が難しい場合:悪質・危険な運転に起因して暴行、傷害、脅迫、器物損壊などが行われ、「自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」と認められれば、危険性帯有者として運転免許の停止処分を積極的に行う

あおり運転を受けたら、車の外に出ずに110番

受けた側がどうするかについて、警察庁はこう書いています。

妨害運転を受けるなどした場合は、サービスエリアやパーキングエリア等、交通事故に遭わない場所に避難するとともに車外に出ることなく、ためらわずに110番通報をしてください。

— 警察庁「危険!「あおり運転」はやめましょう」安全な場所から110番通報・ドライブレコーダーを積極活用(2026年10月確認)

順番にすると、次の3つです。

  1. 交通事故に遭わない場所に避難する(警察庁はサービスエリアやパーキングエリア等を挙げています)
  2. 車の外に出ない
  3. ためらわずに110番通報する

リーフレットも、下の帯に「あおり運転を受けたときは、車外に出ることなく110番を!」と書いています。

同じページは、ドライブレコーダーについて「運転行為が記録されることから、妨害運転等の悪質・危険な運転行為の抑止に有効です」とし、装着して活用するよう呼びかけています。

しない側に回らないために、教則が書いていること

警察庁のページは冒頭で、「十分な車間距離を保つとともに、不必要な急ブレーキや無理な進路変更等は絶対にやめましょう」と呼びかけています。国家公安委員会の告示である「交通の方法に関する教則」にも、11の行為にかかわる書き方がいくつもあります。

車間距離については、こう書いています。

天候、路面やタイヤの状態、荷物の重さなどを考えに入れ、前の車が急に止まつても、これに追突しないような安全な車間距離をとらなければなりません。

— 警察庁「交通の方法に関する教則」第5章第4節2「停止距離と車間距離」(2026年10月確認)

同じ箇所は、大型・中型・準中型の自動車は運転席が高く「車間距離が実際より長く感じられるため、車間距離が短くなりやすい」とも注意しています。

ほかの行為については、次のように書いています。

  • 急ブレーキ:「危険を避けるためにやむを得ない場合のほかは、急ブレーキを掛けてはいけません」(第5章第4節3)
  • 追い越されるとき:「追越しが終わるまで速度を上げてはいけません。また、追越しに十分な余地のない場合は、できるだけ左に寄り進路を譲らなければなりません」(第5章第6節2)
  • 警音器:鳴らさなければならない場所と、危険を避けるためやむを得ない場合のほかは、「鳴らしてはいけません」(第5章第5節)
  • 夜間のライト:「対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません」(第6章第3節2)

教則は最初の章で、道路を通行するときの心構えの1つめに「周りの歩行者や車の動きに注意し、相手の立場について思いやりの気持ちを持つて通行すること」を挙げています。警察庁のページも、「思いやり・ゆずり合い」の気持ちを持った運転を呼びかけています。

長い距離を走る日の休憩の目安は、運転は何時間で休憩すべきかの記事にまとめています。


この記事は、e-Gov法令検索の「道路交通法」、警察庁の「危険!「あおり運転」はやめましょう」「令和2年改正道路交通法リーフレットB」「令和2年版 警察白書 トピックスIV」「交通の方法に関する教則」(いずれも2026年10月確認)をもとに構成しています。引用部分は各文書からの引用で、出典表示のうえ利用しています。この記事は法律相談ではありません。個別の事案については、警察や弁護士にご相談ください。

よくある質問

あおり運転の罰則は?
道路交通法第百十七条の二の二第一項第八号の妨害運転にあたり、「三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」です。妨害運転によって高速自動車国道等で他の自動車を停止させるなど、著しい交通の危険を生じさせた場合は、第百十七条の二第一項第四号で「五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」になります。
あおり運転は1回でも免許取消しになる?
なります。警察庁は、妨害運転をした者は当該行為のみで運転免許の取消処分の対象になるとしています。警察庁のリーフレットでは、違反点数は25点で欠格期間2年、著しい交通の危険を生じさせた場合は35点で欠格期間3年です。前歴や累積点数がある場合、欠格期間は最大5年・最大10年になります。
あおり運転の対象になる行為は?
道路交通法が挙げる11の行為です。通行区分、自転車等の右側を通過するときの通行方法、急ブレーキ、車間距離、進路変更、追越しの方法、夜間の灯火の操作、警音器、安全運転の義務、高速自動車国道の最低速度、高速自動車国道等での停車・駐車の各規定にかかわる行為で、他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法でしたときに罪になります。
あおり運転をされたらどうする?
警察庁は、サービスエリアやパーキングエリア等、交通事故に遭わない場所に避難し、車外に出ることなく、ためらわずに110番通報するよう求めています。ドライブレコーダーは、妨害運転などの抑止に有効だとしています。
クラクションを鳴らし続けるのもあおり運転になる?
なり得ます。警音器の使用を制限した道路交通法第五十四条第二項に違反する行為は、妨害運転の対象になる行為のひとつです。他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法でした場合に、妨害運転の罪になります。
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