コラム

ハイビームとロービームの使い分け。教則の原則は「上向き」、すれ違うときと前に車がいるときは下向き

2026年10月21日 公開

曇り空の田舎道脇に停めた無地の灰色の車と、消灯した丸いヘッドライト。記事タイトルを添えたアイキャッチ
目次
  1. 教則の原則は「上向き」
  2. 切り替える場面を並べると
  3. 高速道路でも同じ
  4. ハイビームは何m先まで見えるのか
  5. ハイビームなら避けられた可能性が高い事故
  6. 法律は「交通を妨げるおそれがあるとき」の操作を義務にしている
  7. 罰則
  8. トンネル、霧、夕暮れ
  9. 昼でも点ける場所
  10. 薄暮時間帯は早めに点ける
  11. 対向車のライトで、歩行者が見えなくなることがある
  12. 夜のドライブで休むなら
  13. よくある質問

夜道で前照灯を上向きにするか下向きにするか。警察庁が公表している「交通の方法に関する教則」の答えは、交通量の多い市街地などを除けば上向き(ハイビーム)が原則で、対向車と行き違うときと前の車の直後を走るときは下向き(ロービーム)に切り替える、です。ここでは教則と道路交通法・施行令の原文、警察庁の事故分析から、前照灯について国が書いていることを整理します。

教則の原則は「上向き」

教則は、危険な場所での運転を扱った章の「夜間」の節で、灯火についてこう書いています。

前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましよう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

— 警察庁「交通の方法に関する教則」第6章第3節2(2)(2026年10月確認)

上向きにする理由は「歩行者などを少しでも早く発見する」ためです。同じ節の続きには、市街地とまぶしいときの対処があります。

交通量の多い市街地の道路などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましよう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましよう。

— 同 第6章第3節2(3)(2026年10月確認)

切り替える場面を並べると

教則と警察庁の「ハイビームの上手な活用」のページに書かれている場面を並べると、こうなります。

場面 前照灯 出典
街灯が少ない暗い道で、対向車や先行車がいない 上向き(ハイビーム) 警察庁
対向車と行き違うとき 減光するか下向き 教則・警察庁
ほかの車の直後を通行しているとき 減光するか下向き 教則・警察庁
交通量の多い市街地の道路など 下向き 教則・警察庁
対向車が自転車のとき 確実に下向き 警察庁
見通しの悪い交差点やカーブの手前 上向きにするか点滅させて接近を知らせる 教則

最後の行は、教則の同じ節にある次の文です。

見通しの悪い交差点やカーブなどの手前では、前照灯を上向きにするか点滅させて、ほかの車や歩行者に交差点への接近を知らせましよう。

— 同 第6章第3節2(4)(2026年10月確認)

警察庁のページは、夜間の安全運転のポイントの最後を「夜間は速度を落とし、前照灯の上向き・下向きの切替えをこまめに行いましょう」と結んでいます。

高速道路でも同じ

高速道路の章にも、同じ趣旨の文があります。

夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きにして、落下物や交通事故などにより停止した車を少しでも早く発見するようにしましよう。

— 同 第7章第2節3(12)(2026年10月確認)

一般道では歩行者、高速道路では落下物や止まっている車を早く見つけるため、と目的の書き方が変わっています。

ハイビームは何m先まで見えるのか

警察庁のページは、道路運送車両の保安基準での前照灯の区分と性能を紹介しています。

区分 保安基準での性能
走行用前照灯(ハイビーム) 夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能
すれ違い用前照灯(ロービーム) 夜間にその前方40mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能

そのうえで、ハイビームで走った場合には、ロービームの場合よりも2倍以上遠くから歩行者を早期に発見することが可能になる、としています。

ハイビームなら避けられた可能性が高い事故

警察庁は、平成28年(2016年)の統計をもとに、夜間に直進中の自動車が歩行者と衝突した死亡事故を分析しています。一般道・非市街地で、発見の遅れが原因の事故などに条件を絞った225件について、前照灯を上向きにしていたと仮定して調べた結果です。

前照灯上向き点灯により衝突回避できた可能性の高い事故が126 件(約56%)あった。

— 警察庁「薄暮時間帯・夜間における死亡事故に係る分析(その7)」(2026年10月確認)

対象は740件から225件に絞り込まれています。外されたのは、酒酔い・過労運転など、上向きにしても衝突を避けるのが難しい著しい高速度、下向きでも余裕をもって止まれる低速度の事故です。すべての夜間事故の半分が防げた、という意味ではありません。

法律は「交通を妨げるおそれがあるとき」の操作を義務にしている

道路交通法は、夜間に灯火をつけることと、すれ違うときの操作を第52条で定めています。

車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。

— e-Gov法令検索「道路交通法」第五十二条第二項(2026年10月確認)

同じ条の第1項は「夜間」を日没時から日出時までの時間と定め、その間、道路にあるときは前照灯・車幅灯・尾灯などをつけなければならないとしています。

具体的な操作は道路交通法施行令の第20条にあります。光度が一万カンデラを超える走行用前照灯をつけていて、すれ違い用前照灯か前部霧灯を備える自動車は、「すれ違い用前照灯又は前部霧灯のいずれかをつけて走行用前照灯を消すこと」とされています。ハイビームを消してロービームにする、ということです。

罰則

条文の罰則の欄によると、第52条第2項に違反した場合は第百二十条第一項第六号の「五万円以下の罰金」で、同条第三項により過失の場合も五万円以下の罰金です。夜間に灯火をつけない第1項の違反も、同条第一項第五号で五万円以下の罰金です。

他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法で第52条第2項に違反する行為をした場合は、第百十七条の二の二第一項第八号により「三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」と、重く定められています。この罪を犯して、高速自動車国道等で他の自動車を停止させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合は、第百十七条の二第一項第四号により「五年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」です。

トンネル、霧、夕暮れ

昼でも点ける場所

教則は、昼間でも前照灯などをつけなければならない場所を書いています。

昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50メートル(高速道路では200メートル)先が見えないような場所を通行するときも同じです。

— 同 教則 第6章第3節2(1)(2026年10月確認)

施行令第19条も、トンネルの中や濃霧がかかっている場所などで、視界が高速自動車国道と自動車専用道路では200メートル、その他の道路では50メートル以下の暗い場所を通行する場合と定めています。霧のときは、教則が「霧灯(淡黄色などの補助前照灯)のあるときは霧灯を、ないときは前照灯を早めにつけましよう」と書いています(第6章第4節3(1))。

明るさの変化そのものについては、教則の別の章が「明るさが急に変わると、視力は、一時急激に低下します」とし、トンネルに入る前や出るときは速度を落とすこと、夜間は対向車のライトを直視しないことを挙げています(第4章第5節1(3))。

薄暮時間帯は早めに点ける

警察庁は、日の入り時刻の前後1時間を薄暮時間帯と呼んでいます。令和3年から令和7年の5年間の交通死亡事故を分析した結果として、次のことを挙げています。

  • 日の入り時刻と重なる17時台から19時台に多く発生している
  • 薄暮時間帯の死亡事故は10月から12月にかけて最も多い
  • 薄暮時間帯や夜間は、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多く4割以上を占める
  • 薄暮時間帯の自動車と歩行者の事故では、横断中が約8割を占める

そのうえで、周囲が見えづらくなっても点灯せず、前方が見えなくなってはじめて点灯する運転者がいることを挙げ、「薄暗くなる前から前照灯を意識的に使用する」前照灯の早め点灯を呼びかけています。教則にも「薄暮時には事故が多く発生しますので、早めにライトを点灯し、自分の車の存在を知らせるようにしましよう」とあります(第6章第3節1(6))。

対向車のライトで、歩行者が見えなくなることがある

ハイビームを下げたあとにも注意があります。教則は運転者向けの節で、こう書いています。

走行中には、自分の車と対向車のライトで、道路の中央付近の歩行者が見えなくなることがあるので、十分注意しましよう。

— 同 教則 第6章第3節1(2)(2026年10月確認)

歩行者向けの章にも同じ注意があり、夜間は歩行者から自動車のライトが見えても、運転者から歩行者がよく見えないことがある、と書いています(第2章第5節)。雨などで路面がぬれているときは、さらに見えにくくなるとしています。教則は夜間の運転全体について、昼間より速度を落として慎重に運転すること、少しでも危ないと感じたらまず速度を落とすことを求めています。

夜のドライブで休むなら

教則は、夜間の節で「少しでも眠くなつたら、安全な場所に車を止めて、休息をとるようにしましよう」とも書いています。眠気については運転中の眠気の記事にまとめました。

一般道沿いの休む場所としては、全国1,234か所の道の駅があります。国土交通省の登録要件で、休憩機能として「利用者が無料で24時間利用できる十分な容量を持った駐車場」と「清潔なトイレ」が求められています(一般道で24時間使えるトイレの記事)。走る道の先にどの道の駅があるかは、都道府県ごとの一覧から探せます。


この記事は、警察庁が公開している「交通の方法に関する教則」「ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止」「薄暮時間帯・夜間における死亡事故に係る分析(その7)」「薄暮時間帯における交通事故防止」、e-Gov法令検索の「道路交通法」「道路交通法施行令」、国土交通省道路局の「道の駅案内 概要」(いずれも2026年10月確認)をもとに構成しています。引用部分は各文書からの引用で、出典表示のうえ利用しています。教則は旧仮名(しましよう・つ)のまま引用しました。

よくある質問

ハイビームとロービームはどちらが基本?
警察庁の「交通の方法に関する教則」では、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、前照灯は上向き(ハイビーム)が原則です。歩行者などを少しでも早く見つけるためです。
ロービームに切り替えるのはどんなとき?
対向車と行き違うとき、ほかの車の直後を走っているとき、交通量の多い市街地の道路などを走るときです。警察庁は、対向車が自転車の場合も確実にロービームに切り替えるよう呼びかけています。
ハイビームはどれくらい遠くまで見える?
道路運送車両の保安基準では、走行用前照灯(ハイビーム)は前方100m、すれ違い用前照灯(ロービーム)は前方40mの障害物を確認できる性能とされています。警察庁は、ハイビームならロービームより2倍以上遠くから歩行者を発見できるとしています。
ハイビームのまますれ違うと違反になる?
道路交通法第52条第2項は、夜間に他の車両等と行き違うときや直後を進むときに、交通を妨げるおそれがあれば灯火を操作するよう定めています。違反した場合の罰則は第120条第1項第6号で、五万円以下の罰金です。
夕方はいつライトを点ければいい?
警察庁は、薄暗くなる前から前照灯を意識的に使う「前照灯の早め点灯」を呼びかけています。教則も、薄暮時には事故が多く発生するので早めにライトを点灯するよう書いています。
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出典